Voicing (ヴォイシング)

ギターの音作りについてお話しします。ギターはいろいろな要素が重なりその音色が決定されますが、最も音色に影響する部分は表板です。

 

古今東西さまざまな人がこの表板について検討してきました。今でも何か新しい発見がないか、自分だけの音作りをするのだと意気込んでいる方もおられます。他の楽器に負けない音量にするとか、コンサートホールで大きな音を出して聴衆に聴かせるため或いは物理的、科学的に調査して過去の名器がなぜ美しい大きな音で鳴るのか分析したり、パソコンを使って周波数解析をして不足分を補うにはどうのようにしたら良いのかなど、実にいろいろな人があれこれと考えておられるようです。

 

では私はどのように考えているかというと、ギターの全体の固有振動数は周波数スペクトラムアナライザで表板とボディを組んだ時のものを確認しますが、だいたいG#かF#くらいになれば良いと思っています。ギターの6弦の2フレットから4フレットになるようにしています。Gはよく使うので外れるようにしています。

 

科学的な分析はこれだけであとはしません。実際に音を聴いて確認しながら音作りするだけです。基本的にいらない音、雑音を消していくようにします。ほとんどの場合、楽器は部品を取り付けた直後はいろいろな音が鳴っており、必要な音、不要な音が混在しています。これが普通の自然な音の状態です。

 

またギターはもともとそんなに大きな場所で演奏するものでもなく、室内で歌ったり、踊りの伴奏をすることが多いので、音量を求める対象でもなく、どちらかというと音色を美しくする方が存在に見合った発展の仕方ではないかと思います。

 

音色については、普通の良い音も雑音の入った音も混在した状態から可能な限り不要な音を取り除き、必要なものだけを残すようにして美しくするというのが、私の音作りの基本的な方法です。したがって、ダブルトップ、ダブルサイド、ラティスなどには興味がありません。

 

従来の普通のスペイン式の製造方法しか実施しておらず、これで十分ギターを楽器としてその性能を十分発揮できると考えているからです。基音がF#かG#にあればその上に倍音は一つくらいあれば良いのではないかと思います。いくつも倍音があってそれがちょうどオクターブ上しかなければ話は簡単ですが、実際はそうではなくオクターブ上の少しずれてところに倍音はあります。

 

これが3つも4つもあればもうわけのわからない音になってしまいます。試しにピアノでオクターブ上で一度か二度ずらした音を2オクターブ、3オクターブ上で鳴らしてみてください。そんなに美しい音でもないと感じると思います。

 

輝くような倍音というものはそんなにいくつもなく、一つか二つの倍音を綺麗にオクターブ上か美しく響くところに上手くずらすだけなのでないかと考えいます。

 

さて私は人の声が一番素晴らしい芸術だと考えています。ギターの音色が美しく人の歌声に近くなるようにするのが目指しているところ(私のギターの表板のヴォイシング)であり、ないものを探すつもりはありません。今あるもので十分未知の可能性があることを信じています。 2024.08.25

 

 

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