フランメンコギターの白と黒を二本同時に製作しています。フラメンコギターには白と黒があります。白というのは横板と裏板がシープレス(サイプレス)で、ネックにセドロを用います。黒は横と裏板にローズウッドなどを、ネックにはマホガニーを用います。
音質について白は、明るく音の立ち上がりが早いです。黒は重厚で深みのある音色になります。ネックの重量にも如実にその傾向が現れています。全く同じ寸法で仕上がっていますが、白は536g、黒は728gです。比重と導管の容積はギター製作に大きな影響を与えるファクターです。
ヒールは膠で接着しています。私は基本的に音響に関する部分は全て膠を使います。膠で接着するためには木材加工の精度が高いことが必要で、上手く接着条件を全て満たすと接着部の強度が高くなります。ヒール部は人の体に例えると腰に当たるのではないかと私は考えています。ギターの中央にありここが強度不足だとギター全体を音が循環せず、腰砕けの音になります。さらにこの部分はスペイン式でネックとボディを接続します。そのスペイン式の一つであるV型の楔を打ち込む方式を採用しています。この方式は強靭で音の伝達性に優れ、ネックの元起きなどが発生しにくいと利点が多くあります。特に理由がない限りこの方法を採用したギターを提供しています。
余談ですが、シープレスというのはスペインの方の棺桶に用いる木材で、子供が生まれた時に家の庭にこの木を植樹するそうです。その木でギターを作るというのはなんともスペイン人らしく、粋ですね。 2023.06.21