パミスパウダーの説明をします。
軽石を細かく摺って極微細粉末になったものや火山灰の微粉末を指して言います。最近は色が白くて、粒子が均一になっているものはほとんど入手しづらい状況にあります。私は製作者の方にいいのが見つからないですよねと相談したところ、「パミスは一生分あるから差し上げますよ。」と気前よくいただきました。とても感謝しています。
ギター製作家がよく「◎◎は一生分あるよ」という言い方をされます。◎◎にハカランダ、エボニー、マダガスカルローズ、ジャーマンスプルースとかが入るのですが、すごいと思います。私は一生分あるよというのは何もありません。
さてこのパミスパウダーですが、何のために使用するかというと木材の導管を埋めるためです。導管というのは木の表面をよく見ると木目方向に細い隙間がいっぱいありますがあれのことです。その細い隙間を埋めないといつまで塗装しても表面の凹凸が残りままみっともない状態になります。
パミスパウダの他にはとの粉、ウレタンシーラー、サンディングシーラー、エポキシ系接着剤などがあります。どれを使っても別に構わないと思います。ギターに使用する時は、どれくらい収縮するか、どんな風に音が変わるかなどその特質を理解すれば別になんでも使えると思います。これでないといけないというものではありません。無収縮と言っているものもありますが、本当にそうなのか確認してから使ったほうが良いと思います。
パミスパウダーの使用方法は、薄くニスを一回木材の表面に塗り、その上にエチルアルコールを染み込ませた布にパミスパウダーをほんの少しつけて、ニスの表面を擦ります。すると乾いていたニスが柔らかくなって動き出します。粘質な状態に変化したニスをこすり導管に詰めるという作業を延々とします。
導管に詰まったニスが乾くまで1日以上待ちます。2週間ほど待つと塗膜の収縮がほぼ収まるのでここまで待てれば一番良いのですが、そうもいかないので適当な頃合で、通常のフレンチポリッシュにとりかかることになります。
最近ではパミスにより塗膜が軟化することで音に悪影響を与えるという考え方があるそうです。どのような考え方も否定はしませんが、それなら遠い昔から行ってきたパミスによる導管を埋める方法は間違いであり、パミスを使って塗装をしてきた楽器は音があまり良くないことになってしまいます。しかし、パミスを使ったもので良い音がする楽器が多くあるので、それらを否定することもないというのが私の考えです。
またパミスによる導管埋めの後、しばらく時間をおいて塗膜の収縮がほぼ終わった時点で、フレンチポリッシュを実施すると塗膜は薄く丈夫になるので良いと言われています。 2023.08.24