長い間欲しいと思いながら、なかなか機会がなかったのですが、漸く天然砥石を入手しました。奥殿(おくど)の巣板(すいた)というものです。
これは奥殿という鉱山で採掘された巣板というガスの微細な空洞が混入された堆積層の一部だということです。京都市の北部でとれたもので現在、鉱山は閉山され、現物の在庫がなくなればもうないそうです。
そのような大変貴重なものであり、わたしは専門知識がないことから、実物を見ずにネット販売のものを購入するのは偽物(コンクリートを練っただけの贋作)をつかまされる危険があるのでは、と考えていましたので、常三郎さんに教えてもらいながら、2年越しで漸く入手できました。
人工砥石で砥げば仕上がりは十分で、天然砥石なんて不要ではないかということもあります。砥粒の径も人工砥石に比べて不均一だし、天然ものは高価でその砥ぎの仕上がり具合は如何ほどなのかわからない・・(写真の白と黄色の部分で砥ぎ具合が違うなど・・・)
ではなぜ天然砥石が必要なのかというと、それは刃先の仕上がりが違うからです。なぜ刃先の仕上がりが人工ものと天然ものが違うのかはよくわかりません。データだけでみれば人工砥石の方が優れているはずです。
また仕上がった刃物の表面が、きらっと輝いているのが人工ものです。天然ものは少し曇ったように仕上がります。
しかし、砥ぎあがった刃物は、天然ものの方が長い間切れるようになります。これは理由がよくわかりません。
天然砥石は1ミリ堆積するのに約千年かかるそうです。従って砥石の厚さは、通常少なくとも10ミリ以上あるので1万年以上の歳月をかけて出来上がっているということです。またもともと赤道直下で生成されたそうで、地殻変動で現在の京都市の北部に移動したということです。
自然の成せる技は人間の創造を明らかに超えています。またこの自然が成すものをうまく利用できる知恵も素晴らしいことだと思います。2024.1.19